国立市の住基ネットに拒否の問題
最高裁の合憲判断を無視し、住民ネットへの接続拒否を続ける一部自治体の姿勢が、改めて問題視されている。
先月、重ねて違法とした東京地裁判決を不服とし、控訴した東京都国立市の、関口博市長は「住民のプライバシー侵害の恐れ」などを控訴理由にしているが、行政が違法を承知で「自説」を押し通すのは許されない。
住基ネットは、国が社会保障と税の一体改革に向けて導入を目指す共通番号制度の基盤システムとして最善である。すべての自治体が参加してこそ最大の効果を発揮するのが制度本来の仕組みであり、訴訟の長期化は国立市民の不利益だけで済まない。(産経新聞:主張)
市長は、直ちに控訴を取り下げ、違法状態の速やかな是正に取り組むことだ。福島県矢祭町も同様である。判決で、住基ネットの目的は、「行政コストの削減」「事務の効率化」「住民の利便性向上」などを挙げている。
これらを達成するために、市町村は「住基ネットに接続する住民基本台帳法上の義務を負う」とも指摘した。その上で、国立市の対応を「法律上の義務に違反し、目的の達成を妨害する」と断じた。
「住基ネットはプライバシーを侵害せず、憲法に違反しない」とした過去の最高裁判決などに沿ったものだ。市独自の判断で法律違反を続けることは、法秩序維持の観点から許されない、という司法の明確な意思表示でもある。
住基ネットに接続している市町村は、住民の転入・転出などの事務処理をネットワークを通じて行っている。これに対し、国立市は従来通り、転出先の市町村に書類を郵送する手間をかけている。
判決は、業者に委託しているこのデータ保存費用などについて、住基ネットに接続していれば必要のない違法な支出と認定した。過去に支出済みの約40万円については、市長が賠償責任を負うとの判断も示した。
公金の違法支出が認定された以上、国立市は速やかに施策を改めるのが市民への責務である。政府が導入を目指す「社会保障と税の共通番号制度」の基盤となるのも住基ネットだ。その際、前提となるのは、全市町村の住基ネットへの参加である。
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