麦秋の想い
丁度今頃、麦の穂が黄色く色付く頃を、麦秋または 麦の秋などと言う。秋を百穀成熟の期とし、夏ではあっても秋と言う。
百姓であった我が家では、今の時期は田んぼの麦刈りで忙しい毎日を過ごしていた。小学生であった私であったが、学校から帰ってくるのを待っているように手伝わされた。早く刈り取らないと、田植えが出来ない。現在と違って手仕事が多く鎌で刈るのであるが小さい手はなかなかはかどらない。
刈った麦は、雨に掛からぬように、大きくまるいて、リャーカーで家まで運び、足ふみ脱穀機で脱穀するのであるが、麦の穂が汗で濡れていている顔・首などに当たり、みみず腫れになり赤くなって痛い。この時期は百姓にとっては、猫の手を借りたほどの忙しさだったのだ。
麦は初冬に蒔かれ越冬し、5~6月頃実りの時期を迎える。昔は米の裏作と して雑穀と同じような扱いをされた。ただ、米でも麦でも作った人間に してみれば収穫の喜びは同じである。
湿気の多い今頃だからだろうか、麦畑には稲穂の乾いた匂いとは違い、青臭さ を残したような、むっとする匂いがする。これは麦だけの匂いではなく、周りの 植物が育つ匂いも合わさっているからだろう。 よく、親父が言っていた、「山の栗の花が咲いているときに田んぼの仕事を終らせれば、仕事は順調だ。」と・・・
万物実りを迎える秋と違うから周りは濃淡様々な緑色に輝いている中で、 熟し色付いているのは麦畑だけである。 麦秋が心地よい時間を、ほどよい疲れを思わせる。目に映るもの、肌で感じるものを楽しんで生きたい。時間の流れに身をまかせるような過ごし方を意識しながら・・・。
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