深刻化するミツバチ不足
むかし、レンゲが咲いている田んぼにミツバチが花に止まって蜜を吸っている光景がよく目にしたものである。私の住んでいる近くには、開発されて田んぼはなくなり、ましてレンゲなどは目にすることは出来ない。
ミツバチ屋さんに行くと、今の時期、菜の花・レンゲ・アカシア・梨などで季節の香りがする物が売られていて季節感を味わえた。ところが、NHKのニュースでミツバチが足りないという。全国各地で受粉用のミツバチが不足し、農作物への影響が心配されているそうだ。
NHKスタジオパークより
ミツバチ足りないのかというと?
ミツバチというと、養蜂家が箱で飼育して蜜を集めるのが有名だが、、もう一つの重要な役割が農産物の受粉だそうだ。受粉をキチンと行わないと綺麗な実がつかない。そこで農家はミツバチを養蜂家から買ったり、借りたりして受粉作業に使うのだが、このミツバチが各地で不足しているという。
どのくらい不足しているのかというと?
これは農林水産省が、ミツバチの不足がどこで起こっているのか緊急に調査したもの。これによると、山形や福島、千葉、群馬などの関東周辺。さらに中国地方や九州などを中心に全国21の都県でミツバチが不足していることが分かった。
こうした地域では、イチゴやメロン、なすなどのハウス栽培。それに野外でのなしやリンゴ、サクランボなどの受粉をミツバチに頼っている。もしミツバチが使えなくなれば受粉作業は最悪、人の手で行わなければならない。農家は高齢化していますし、また大規模にやっているところほど、影響が大きい。
実際に影響も出ているのか?
ミツバチ不足は去年の秋くらいから深刻化しており、収穫が終わりに近づいているイチゴでは、東京や香川、徳島で収穫量が見込みを下回り、静岡や佐賀などでも受粉がうまくいかずイチゴの形が悪くなったとの報告が寄せられている。
イチゴ農家では、毎年10月頃に養蜂家などからミツバチの群れを箱ごと購入するのだが、例年だと1万円から1万5000円だった群れの価格は5割近く上がっていて、十分にミツバチを確保できなかった農家も少なくなかったという。
これまで夏が暑くてハチが弱ったりすることはあったが、ここまで不足したのはこれまでにはない。
しかしなぜ、ミツバチが不足しているのか?
いろんな要因が絡んでいるが、主な原因と考えられているのは三つ。
一つはハチの大量死で、原因と考えられているのが農薬。去年も北海道で大量に蜂が死に、死んだミツバチから、稲につくカメムシ駆除用の農薬が見つかった。この農薬は人間にはあまり影響はないが、虫に対する毒性は強力。蜂は農薬に汚染された花の蜜や水を巣に持ち帰って、これが大量死を引き起こしたのではないかという説。
そして二つ目はダニの影響。ハチにはヘギイタダニという主に幼虫に寄生するダニがおり、ハチの体液を吸ってしまう。最近は薬も効かなくなりハチの繁殖力を弱めているという。
そして三つ目は、輸入のストップ。
これまで日本では、花粉交配用ミツバチの17%ほどをオーストラリアやハワイから、輸入してきた。女王蜂を輸入し、国内で増殖した後これを交配に使っているのだが、オーストラリアなど輸出国でミツバチの伝染病が発生し、すべての輸入がストップしている。これが大きな打撃となったというわけ。
アメリカで起こっているハチの失踪とは関係ない?
アメリカでは2005年あたりから、働き蜂が突然巣からいなくなってしまう、CCD「群れ崩壊症候群」と呼ばれる現象が全米に広がり、深刻な農業問題となっています。原因もよく分かっていませんが、すでに全米の4分の一のハチが消滅したと言われている。
日本でも畜産草地研究所が去年、全国の養蜂家にアンケートを行ったところ、23%が、原因不明で蜂の群がいなくなったと回答している。
アンケートを実施した「木村きよし」さんによると、断定は出来ないが、ハチが弱っている状況はアメリカによく似ていて、注意深く観察する必要があるという。
今後影響は広がっていくのか?
農林水産省では、国内でのミツバチの数を増やすことを考えている。ところが状況はなかなか厳しい。
国内の養蜂家の数は、昭和55年には1万戸ぐらいいたのだが、年々減り続け現在は、その半数の5000戸。海外産の安い蜂蜜との競争という理由もあるが、なにより国内に蜜源となる花が少なくなっている。
重要な蜜源だった菜の花は国内で油を作らなくなって観光用にしか残っていませんし、レンゲもかつては畑の肥料として作られていたのだが、化学肥料が出来て見ることも無くなってきた。日本の農業の構造が変わり、養蜂家の数が少なくなっては、ハチの数も増やせない。
今後どうなる?
農林水産省は当面は、全国の不足状況を見ながら、ミツバチをやりとりする需給調整を行い、ながら、病気が発生していないアルゼンチンから女王蜂の輸入を進めるとしている。
ただ世界的にミツバチの世界がおかしくなっていることを考えると海外頼りは危険。国内でも例えば使われていない農地に花を植えるなど、ミツバチ農家を支援する体制を組むことが必要。
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