風光る
今日の名言
総じて人は己れに克つを以て成り、自ら愛するを以て敗るゝぞ。 |
西郷隆盛『西郷南洲遺訓』 |

月鈴子は鈴虫のこと。げつれいしと読む。旧制静岡高校で中曽根康弘と同窓。東大卒業後、国策による合併企業帝国石油に勤務。企業幹部とならず労組の中央副委員長や新産別の副執行委員長として一貫して労働者の側に立った。
俳句は「寒雷」創刊以来加藤楸邨に師事。森澄雄、平井照敏のあと編集長を務める。平成四年、享年七六の月鈴子さんの葬儀に、僕は車に楸邨を乗せ参列した。楸邨はすでに支えなければ歩めぬほどに弱っていたが、遺影の前に立って弔辞を述べた。
弔辞の中で楸邨は、氏の組合活動への情熱をまず回顧して称えた。帰って来ない蝶は底辺労働者の誰彼。彼らの闘争の歴史の上に太いパイプが築かれる。
自分と同時代の人間と社会の関わりを詠んだ俳人は多いが、「社会性」を単なる「流行」として齧り、たちまち俳句的情緒へと「老成」していった「賢い」俳人もまた多い。月鈴子さんは本物だった。『月鈴児』(1977)所収。(今井 聖)
白鳳仏にいくさ経て逢ふ風光る 久保田月鈴子
これも久保田月鈴子の句ではあるが、うららかな春の日、風が吹き渡ると風景の明るさがまるで風が光る感じがする。その感じを『風光る』と作者は表現している。今年の桜の二回目の開花宣言が気象庁で発表された。
それによると、東京は二十四日だ。3月のこれまでの気温が平年より高く推移し、今後も高い見込みで、予想開花日は前回(4日)発表と同じか1日早まった地点がほとんど。観測47地点の9割以上に当たる43地点で平年より早く開花すると予想している。最も早いのは熊本の3月16日である。
私は、『暑さ寒さも彼岸まで』の昔からのことわざを思い出し、直ぐ前の片倉城址公園の桜の木を眺めて『風光る』さまを感じた。桜の花が好きだった、義母の眠る墓地は桜の木があり、花びらが降りそそぐ場所にある。義母の一周忌が終わって思い出した。
« 口にするのもおぞましい事件 | トップページ | 取材合戦の激しさを実感 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント