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2008年8月29日 (金)

議長発言のこと

0107ukisima11朝日新聞社説より)河野洋平衆院議長の、このところの積極的な発言が注目される。ひとつは、全国戦没者追悼式での式辞だ。63回目の終戦の日に「特定の宗教によらない、すべての人が思いを一にして追悼できる施設」を真剣に検討するよう政府に求めた。

小泉政権時代、首相が靖国神社への参拝を繰り返し、中国など近隣国との外交がおかしくなったのは記憶に新しい。国内でも論争を巻き起こした。 戦争で亡くなった人々を、だれもがわだかまりなく追悼できる施設がほしい。当時、官房長官だった福田首相に有識者の懇談会が提言した「無宗教の追悼施設」は、そんな考えに基づく。

首相が参拝を控え、近隣国との関係も落ち着いてきた今こそ、この議論を詰めたらどうか。これが河野氏の言いたかったことだろう。 同じ式辞の中で、議長は領土問題にも触れ、「互いに内向きに領有権を主張するばかりでなく、真摯(しんし)に向き合い、話し合いによる解決を」と述べた。韓国と争いになっている竹島が念頭にあったのは間違いあるまい。

いずれも、中国などアジア諸国との関係を重視してきた河野氏の信条に根ざした発言なのだろう。 これに対し、中立であるべき議長なのに特定の立場を表明するのはいかがか、時と場所をわきまえていない、という意見もある。

しかし、そうだろうか。議長が議会運営にあたって与野党の主張をくみ、公平に差配するのは当然のことだ。その立場から、言動に一定の自制が求められるのも確かである。

だが、だからといって、国の基本的なあり方について、立法府の長が自らの思いを語ることまでしばられるべきではなかろう。戦争の反省を踏まえ、追悼のあり方や近隣諸国と良好な関係を持つ重要さを説くことが、追悼の場にそぐわないとも思えない。河野氏は、小泉時代の06年の追悼式でも「戦争責任をあいまいにしてはならない」と発言した。三権の長のひとりが、そうしたメッセージを内外に向けて発した意味は大きかった。

もうひとつは、G8の下院議長会議を広島に誘致したことだ。米国のペロシ下院議長にも直談判し、来月2日の会議出席に快諾を得たという。原爆投下をめぐっては、それを正当化する米国の認識と日本との間には大きな開きがある。現職大統領のひとりとして被爆地を訪れたことがないなかで、大統領継承順位3位という、これまででもっとも地位の高い下院議長を招く意義は大きい。

議長というと、議会の公正な行司役といった役回りばかりに目が向きがちだが、批判をおそれず、率直に信念を語るという議長像もあっていい。

議長は中立でなければならないというが、必ずしももそうとは思わない。全てのことで制約される事であるならば、誰も出来ない。誰しも主義・主張はある。それを封印するとは、ややもすると人権の問題になる。

河野衆議院議長の与野党を超えた物の見方、発言は私も、建設的であり、素晴らしいことと思う。

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