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2008年7月27日 (日)

断罪が導く地道な時代

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朝日新聞社説【抜粋)より

かつての「時代の寵児(ちょうじ)」が再び断罪された。元ライブドア社長の堀江貴文被告に対する控訴審で、東京高裁は一審判決を支持し、懲役2年6カ月の実刑判決を言い渡した。

堀江被告は、自らに不利な元部下の証言内容は信用できないなどと反論し、無罪を主張していた。裁判長はこれらをことごとく退け、「最高責任者の被告の指示・了承がなければ犯行はありえない」「犯行について反省の情はうかがわれない」と厳しく断じた。

派手なM&Aに頼らず、最近の傾向は、長い目で会社を発展させるにはどんな戦略が大事なのか、地道に見きわめようとしているようにみえる。事件の高い授業料が生きているといえよう。

とはいえ課題は多い。株主利益の偏重に陥らずに、社員や顧客や社会のあいだでどうバランスさせていくのか。他方、1500兆円の個人金融資産を日本経済の発展に回す役割を、株式市場はまだ果たせていない。

事件を機にIT業界では世代交代が進み、堀江被告よりも若い70年代半ば以降に生まれた社長たちが活躍している。たとえば、ネット上でコミュニティーを提供しているミクシィ。事件後に上場したが、M&Aには慎重で、長期的な成功を目指して地味な技術開発に根気よく取り組んでいる。

それにしても、わずか2年半前だった「ホリエモン逮捕」の衝撃が、ずいぶん昔の出来事のように感じられる。堀江被告が控訴審に一度も出廷せず、メディアにも姿を見せないせいもあるが、株式市場の状態が当時からは様変わりしたのが原因だ。

プロ野球に放送局。ライブドアは派手な企業合併・買収(M&A)を仕掛けて自社の株価をつり上げ、ふくらんだ時価総額をテコに次のM&Aへ乗り出す。肝心の事業内容はイメージばかりで、実態は買収ファンドに近い。株価引き上げのため利益を不正に大きく見せたのが今回の事件だ。

こんなマネーゲームができたのは、バブル後の長期不況から抜け出す道をそんな手法に夢見た一般投資家が、同調して株を買ったからである。

だが事件をきっかけに、一時の熱狂は急速にしぼんだ。続いて摘発された村上ファンド事件では「もの言う株主」にも懐疑が広がった。その後も外国系ファンドによるM&Aや株主提案の試みが続いているが、一般株主の反応は打って変わり冷静だ。

あの教訓を踏まえ、若い経営者たちは「苦境に陥った時に会社を守ってくれるのは何か」と常に考えているようだ。頼みになるのは顧客や従業員、そして社会からの支持だ。事業を通じて社会にどう貢献するか。ここに心を砕く経営者が増えるよう期待したい。

昔から、地道な考えが信頼、安心の社会は求めている。宇宙旅行は、そんなに旨くはいかないものだ。

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