ふるさと納税
東京新聞(筆洗)から 作家の故藤沢周平さんはふるさとの風景を目にするといつも、いくぶん気はずかしい気持で、やはりここが一番いい、と思っていた。『日本海の落日』と題した随筆にある。
なぜ気はずかしい気持ちになるのか。その地に生まれた自分にとってはかけがえのない風景でも、よその土地から来たひとたちにとって、それほど賞美に値するものかどうかは疑わしいからである。
石川啄木もかにかくに渋民村は恋しかり/おもひでの山/おもひでの川と望郷の念を詠んでいる。その地に愛着があるだけで、どこにでもある風景が特別な風景に変わっていく。
財政難に悩む全国の自治体が、藤沢さんや啄木のような人たちに熱い視線を送っている。「ふるさと納税」制度が今月から始まったのだ。自治体に寄付した金額に応じて居住地の住民税が控除される。
利用の際、五千円が手数料のように持ち出しとなることや、寄付の文化が日本で根付いていないことを理由にさほど普及しないとの声がある一方で、PRが進めば利用者は急増するとの見方がある。
自治体の工夫次第で、魅力が増していくことは確かだろう。図書館の児童書の充実や高校スポーツの活動支援など、使い道を指定できる仕組みにした県もある。室生犀星の詩にあるようなふるさとは遠きにありて思ふものだけでなく、応援するものになっていこう。
趣旨(総務省) 最近、地方公共団体の長などから、都会に転出した者が成長する際に地方が負担した教育や福祉のコストに対する還元のしくみができないか、生涯を通じた受益と負担のバランスをとるべきではないかとの意見が、また、都会で生活している納税者からも、自分が生まれ育ったふるさとに貢献をしたい、自分と関わりの深い地域を応援したいという事からだ。
米国の大統領選挙資金と寄付 アメリカの大統領予備選挙は、各候補者は2億ドルを集める必要があるとしている。なお、前回の2004年の大統領選挙においてブッシュ・ケリーの両候補はそれぞれ予備選挙段階で2億ドルを超える選挙費用を調達している。日本円で200億円以上であり、寄付が殆どという。インターネットで振り込むとの事だ。
日本はアメリカなどに比べ寄付の認識が低いと言われている。従って、地方の公共団体では、「ふるさと納税」制度制定し魅力をましていきたいとの趣旨はわかるが、使い道を誤ると大変なことになる。
地方の独自のいい面を生かし、本当の意味のふるさと創生の自助努力を忘れてはならない。
« 無常迅速 | トップページ | 茂木健一郎の脳活用法スペシャル »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント